2026年4月29日(水)
こんにちは。
医療法人TDC 岡山筒井歯科クリニック 院長の筒井淳斗です。
6月に歯科診療報酬改正が行われます。最近の医療業界の大きな流れとして挙げられるのが、医科と歯科の連携強化です。糖尿病と歯周病の関係、歯周病菌と心疾患の関連など、口腔と全身の関係が強く注目され、学会やセミナーでもこのテーマが非常に多く取り上げられています。
私自身は糖尿病ではありませんが、その理解を深めるために、現在は Dexcom G7 を使用し、毎日リアルタイムで血糖値を測定しています。リアルタイムCGMは、間質液中のグルコース濃度の変化を連続的に把握し、血糖マネジメントをサポートする医療機器です。Dexcom G7ではスマートフォンでリアルタイムに数値を確認できるだけでなく、血糖値の上昇・下降のトレンドも把握でき、急激な変動はアラートで知ることができます。

実際に使ってみて感じるのは、血糖値は“点”ではなく“流れで見るもの”だということです。同じ140mg/dLでも、ゆっくり上がってきた140と急激に上がった直後の140では意味が全く異なります。Dexcom G7ではその流れが矢印で表示されるため、次の変化を予測できる点が非常に有用です。
さらに測定を続けていくと、食べる順番、食べるスピード、運動の有無によって血糖値の動きが大きく変わることが分かります。例えば空腹時にいきなり炭水化物を摂取すると血糖値は急上昇しますが、野菜やタンパク質から食べることでその上昇は緩やかになります。この違いが感覚ではなく数値として可視化されることに、大きな意味を感じています。
そしてもう一つ強く実感したことがあります。それは「咀嚼の重要性」です。しっかりと噛み、時間をかけて食べるだけで血糖値の上昇は緩やかになりますが、ほとんど噛まずに丸飲みするような食べ方をすると血糖値は急激に上昇します。歯でしっかり咀嚼するという基本的な行為そのものが、血糖コントロール、ひいては全身の健康に直結していることを、自身の体で体感することができます。
最近では実際に体を使った検証も行っています。総社マラソンや宮島マラソンに参加し、Dexcom G7で運動中の血糖値の変動をリアルタイムで確認しています。

マラソン後にはあえて暴飲暴食を行い血糖スパイクを生じさせ、その後に山登りなどの有酸素運動を行うことで血糖値がどのように低下していくのかも検証しています。
ジムで行う無酸素運動とマラソンなどの有酸素運動でも血糖値の動きには違いがあり、身体は非常に正直で、すべての数値に意味があります。「なぜ上がったのか」「なぜ下がったのか」と考えること自体が、非常に有意義なプロセスだと感じています。
血糖値を緩やかに上げるためには何が必要か、血糖スパイクが起きた際にどのような運動が有効か。このように自分の体を使って検証していく過程は非常に興味深く、運動や食事内容、食べ方によって結果が大きく変わることを実感しています。数値として可視化されることで、日々の行動の中で自然と血糖値を意識するようになりました。
糖尿病は歯科領域においても多くの影響を及ぼします。血糖コントロールが不良になることで免疫機能が低下し、炎症が起こりやすくなるため、歯周病は進行しやすくなります。歯ぐきの腫れや出血、歯槽骨の吸収が進行し、結果として歯の喪失リスクが高まります。また創傷治癒が遅延するため、抜歯後や歯周外科処置後の回復が遅く、治療の反応性も低下しやすくなります。さらに高血糖状態では細菌の増殖が促進され、歯周膿瘍や根尖病変の悪化、口腔カンジダ症など感染症のリスクも上昇します。
加えて、唾液分泌の低下による口腔乾燥も生じやすく、う蝕や口臭、粘膜トラブルの増加にもつながります。インプラントや外科処置においても、血糖コントロールが不十分な場合にはオッセオインテグレーションの不良や術後感染のリスクが高まり、予後に影響を及ぼす可能性があります。
そして重要なのは、これらが一方向ではないという点です。歯周病による慢性的な炎症はインスリン抵抗性を増大させ、結果として糖尿病の血糖コントロールを悪化させるという相互関係が存在します。つまり、糖尿病は歯科治療の難易度や予後に影響を与えるだけでなく、口腔内の状態そのものが全身の代謝状態にも関与しているのです。
歯科治療は単なる局所治療ではなく、全身管理の一部である――その認識が、これからますます重要になっていくと感じています。
現在糖尿病でない方も、日々の生活の中で一度「血糖値」を意識してみてはいかがでしょうか。可能であれば Dexcom G7 のようなデバイスを使って、自分の体の反応を“数値化”してみるのも一つの方法です。「この行動をすると血糖値は上がるのか、下がるのか」。その答えがリアルタイムで返ってくるのはとても興味深く、実際にやってみると自分の体のクセが見えてきます。食事や運動、そして咀嚼の大切さを自然と意識するようになるはずです。
岡山筒井歯科クリニックでは、今後さらに糖尿病をはじめとした全身疾患との関連を意識し、医科との連携を強化しながら、より包括的な医療の提供に努めてまいります。